患者さんから、またかかりつけ医(主治医)の歯科医師の先生からのお問い合わせで少なくないのは

「まずは保険治療でやって治らなかったら専門医に治療してもらえば良いですか?」

というもの。

えぇ、気持ちは分かります。専門医ならこじれたものでもなんとかしてくれそうですし、費用もかかることですしできれば保険治療の範囲内でおさめられればそれに越したことはないですよね。

しかし費用を抑えたい事が優先順位として高いようであればそれはそれで良いと思いますが歯の寿命を少しでも延ばしたい事を優先したいような場合、違います。

ではどの段階で専門医、または専門医レベルの歯内療法を受けたら良いのか?

それは「むし歯の進行が深く、歯髄(歯の神経)に近いことが疑われる場合」から考えていただきたい、です。

一般的に無菌的な環境をを整えてしっかりとやっていただければ歯内療法は高い成功率で歯を守ることができます。

・歯髄保存療法

・根管治療

・再治療

となるにつれていわゆる難易度が上がる、言い換えれば難治性になってくるものです。早い段階で進行を止めることができればその後有利になることはご理解いただけるかと思います。

また根管治療と再治療では

(1)根管治療(根の先に炎症を認めないもの) 成功率90%以上

(2)根管治療(根の先に炎症を認めるもの) 成功率80%程度

(3)再治療(元々の根管形態を維持しているもの) 成功率70~80%程度

(4)再治療(元々の根管形態を維持していないもの) 成功率約50%

にわけ、それぞれの成功率の違いを報告している文献もあります。(ⅰ)

念のため補足しておきますけれども米国の歯内療法専門医による治療の成功率ですので日本のどこで行ってもこの成功率なんだ、と思わないでください。

また、前歯や奥歯など歯の部位による難易度などもかかりつけ医で治療するのか専門医レベルの治療をするのかを判断する基準となるでしょう。

かかりつけ医(主治医)の歯科医師の得意不得意や治療方針によってどこから専門医や専門医レベルの治療を紹介するかはそれぞれになりますが、どこかで線を引いておられると思います。

医療の主役は患者さん自身ですのでご自身の希望(治療に対しての優先順位など)を伝えかかりつけ医(主治医)の先生とよく相談していただければ、と思います。

 

院長:高橋

(ⅰ)

Y.-L. Ng, V. Mann, S. Rahbaran, J. Lewsey & K. Gulabivala :Outcome of primary root canal treatment:systematic review of the literature – Part 1. Effects of study characteristics on probability of success.International Endodontic Journal, 40, 921–939, 2007

Sjögren U, Hagglund B, Sundqvist G, Wing K:  Factors Affecting the Long-term Results of Endodontic Treatment .J Endod,16:498-504,1990Gorni FGM, Gagliani MM. The outcome of endodontic retreatme nt: a 2-yr follow-up. J Endod 2004;30:1–4.