人間見た目じゃないっすよ!…なんて若い頃は思ってたものですが、それなりに年齢を重ねていくと「結構見た目通りだよなあ」と思うことも少なくなくやっぱり見た目って大事だよなあ…などとつい思ってしまいがちです。
見た目に騙されてはいけませんよ!見た目だけで判断してはいけませんよ!という経験をしましたのでご報告いたします。
初診時レントゲン写真です。
根の先の病気は2本にまたがっているほど大きくなっていますが向かって左側の歯が大きくむし歯になっているのがわかります。
お口の中の写真はこちら
ぱっと見、よくわかりませんよね。
拡大してみましょう。
やはり大きくむし歯になっているのがお分かりかと思います。
当然、患者さん自身も大きなむし歯になってしまっていることを理解してくださり、現在の病状と治療法の種類とそれぞれの治療法の見通しについて説明させていただき、根管治療(根の治療)の選択を決断していただきまして、精密根管治療を行いました。
3ヶ月経っても根の先の影は縮小傾向にならず、根の先あたりの歯肉におできのようなもの(瘻孔)もできてきています。
痛みなどがあまりないため、このまま経過を観ることも十分可能です。しかし、毎回しっかりと診査をしていくうちに隣の歯も失活(歯の神経が死んでしまっている)していることがはっきりしてきました。実は最初のうちは生活反応があった歯だったのです…
もう一度患者さんに現在の病状と治療法の種類とそれぞれの治療法の見通しについて説明させていただき、根管治療(根の治療)の選択を決断していただきまして、隣の歯の精密根管治療を行いました。
隣の歯の治療直後です。
隣の歯の治療後5ヶ月経過時です。
治療直後から根の先あたりの歯肉のおでき(瘻孔)は消え、まだ完全ではありませんがレントゲンでの根の先の影が小さくなっていることが確認できるかと思います。
見た目で判断すると騙されますよ、という症例でした。
もちろん、今後どうなるか神のみぞ知る部分ではあるのですが、治癒傾向にありよかったよかった、という経過にはなっています。この症例がうまくいった理由を考察すると…
・大前提として「ルールに則った根の治療」を行っている
僭越ながらできる限りの治療を行っております。もし従来通りの治療を行っていたら…ずっと(3ヶ月?半年?)根の消毒を繰り返していたのかもしれません。ですが今回うまくいっている理由はそれだけではありません。
・患者さんがしっかりと定期検診に応じてくれた。
「治療したのだから」とか「痛みはないから」などと自己判断して定期検診で経過を診せてくれなければ隣の歯の治療が遅れ病気の進行の可能性も高かったのかと思われます。
・診査診断を定期検診ごとにしっかり行えた。
「ルールに則った根の治療」を行ったのだから…と安易に外科的治療に移行することなく、愚直に診査診断を行ったこと、、これは自分を褒めてあげたい(笑)です。
病気の原因である歯は簡単には特定できないことも少なくありません。また、ボタンを押したら電気がつくように治療をしたら治るものでもありません。経過観察や診査診断は地味なことではありますがとても大切なことです。
もし診査診断が違っていたら治らずずっと治療を繰り返していたのかもしれませんし、より侵襲の大きい治療(外科手術や抜歯など)を行っていたのかもしれません。
今回、これで治らなければ2本同時に外科手術を行う可能性がありましたが、このまま良い経過が続いてくれるかどうか、しっかりと今後も経過を診させていただければ、と思います。
院長:高橋