2016年2月11日に行われた関東歯内療法学会2016年第15回学術大会に参加してきました。

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今回のメインテーマはMTAという治療に使用するセメントの概略や臨床応用についての発表でしたが、近年の歯内療法の革新的な技術や材料、を代表するMTAへの関心度は非常に高く、参加人数が例年よりも非常に多くなったこともあり会場に入りきれないほどの盛況でした。

 

僕は所用で少し遅刻してしまったばかりになんと会場に入れず廊下で発表を聴講させていただく、という状態。(笑)

発表された症例はどの症例も素晴らしく、今回もしっかりと勉強させていただきました。

MTAとはどのような材料かというと…

・硬組織の自然治癒、再生能の妨げを起こしにくい高い生体親和性

・直接覆髄の成功率の可能性を高める高い封鎖性

・余裕のある操作が可能な長い操作時間

デンツプライ三金ホームページより引用)

要は今までの材料と比較すると体に優しく、固まると他からの刺激や細菌の侵入を防ぐ材料です、ということです。

最新の材料と注目を浴びていますが欧米では1998年から1999年にかけて発売されたもので、他の歯科用材料と比較すれば歴史は浅いものの15年以上世界各国で使用されている材料となります。

当院もMTAは使用しており、MTAの物理化学的特質に非常に助けられており結果として患者さんの歯の神経を残す適応が広がっています。また現在では様々な研究も進んでおり、患者さんは安心してMTAの治療への応用について理解していただけたらと考えます。

しかしながら歯内療法を成功させるための根本は感染してない根の中へ細菌を感染させないこと、感染してしまった根の中の細菌を徹底的に取り除くこと、に尽きるのです。

MTA自体が歯内療法の問題を解決する唯一のものではありません。

僕の所属しているスタディクラブ、ペンエンドスタディクラブインジャパンの主宰、石井宏先生もMTAセメントの紹介記事の冒頭にこのように述べています。

MTAセメントの話題に移る前に、この材料の使用者が決して忘れてはいけないことを一つ強調しておきたい 。それは、MTAセメントの使用が処置における成功率を上げる、もしくは臨床的問題を解決するための唯一の要因ではないということである。成功率を上げるために最も重要な要因は、れぞれの問題(穿孔、 露髄など)において文献的に明らかにされている適応症、 診断基準、術式を厳密に守ることである。そのうえで使用材料をMTAセメントに変更することにより 少なくとも過去に文献で得られているのと同程度かそれ以上の結果を導ぎ出す可能性がある、ということを忘れないでいただきたい。

(歯界展望 Vol. 112 No 6 2008-12より引用)

ただMTAを使用さえすれば良い、というわけではありません。しっかりと診査診断をし、治療環境を整えた歯科医院で正しくMTAを使用した治療を受けていただきたいと思います。

自分自身への戒めを含めてこの引用で締めたいと思います。

この材料が不適切に使用されれば、い結果が得られずにその信頼性を下げることになりかねない。

(歯界展望 Vol. 112 No 6 2008-12より引用)

どのような材料も魔法の杖にはなりません。だからこそしっかりとコンセプトを遵守し、材料単独に頼ることのないような治療を心がけています。

院長:高橋