根の治療を専門に行なっていると何度も治療しているのに治らない、というご相談は非常に多いです。

治療が失敗してしまい、治らないことには理由があります。

過去に「はじめての根管治療で失敗する5つの原因」と治らない理由について発表されています。(SUNDQVIST et al. Endodontic Topics 2003)

その5つの原因とは以下の通りです。

原因① 無菌的治療がなされていない

原因② アクセスキャビティーが適切でない

原因③ 根管の見落としがある

原因④ 機械的拡大が不適切

原因⑤ 修復物からの漏洩

原因①の無菌的治療がなされてない、これはルールを守ってないこと、例えばアルコールを飲んで運転する、シートベルトをしない、ノーヘルでバイクを運転する、というようなものです。アルコールを飲んで運転しても無事に目的地に着くこともあるでしょう。しかし何か問題が起こった場合に言い逃れできませんし取り返しもつきません。しかも問題が起こった場合にその問題が大きくなってしまう(難治化)ことも似ています。昔は規制が緩かったことも似ているのではないでしょうか?

原因②のアクセスキャビティーが適切でない、これは治療するにあたって歯に穴を開けていくわけですが、その穴あけの基本テクニックをおろそかにしてしまうと治療目的が達成されないことにつながります。筋トレを正しいフォームで行わないとトレーニング効果が薄まることに似ているのではないでしょうか?

原因③の根管の見落としがある、これは治療技術の良し悪しというよりも根管形態が複雑であることを知っているかどうか、診査時に複雑かどうか予測を立てられたかどうか、治療時に確認しながら進めていくことができるかどうか、ということです。地図を持たずに旅に出ることや夜ライトをつけないでドライブすることに似ています。治療では治療前にしっかりとレントゲン診査をしたかどうか、その評価をしているかどうか、治療中はマイクロスコープを用いて確認しながら治療を進めているかどうか、ということになります。

原因④の機械的拡大が不適切、これは治療中のエラー(ミスではありません)や根管の複雑さ故に治療が不十分、もしくは過剰になってしまうことで、ここに歯科医師の技術の差が出るのかもしれません。

原因⑤の修復物からの漏洩、これは治療後の被せ物や詰め物の精度がそれほどでもないような場合や、日常生活のプラークコントロールに問題があるような場合に歯と被せ物や詰め物の隙間から細菌が侵入するようなことで、再発の原因になります。詰めが甘いと指摘されてしまうかもしれません。

今回はこのケース

 

 

 

 

 

 

何度も治療を繰り返しているのに違和感が取れないと転院され、転院先の歯科医院よりご紹介いただいたケースです。

何が治らない原因なのでしょうか?

このように途中で治療が止まっている場合は石灰化(根管が細くなりすぎて治療の器具が入らない状態)か途中で分岐(Y字路のようになっている)ことが多いようです。

 

 

 

 

 

 

 

このような状態です。このような状態がある、ということを事前に知っているかどうか、途中で終わっている治療状態を見た場合、どのような可能性があるのかないのか、見極める知識というものが治療の成功を左右します。

上述の③と④が治らない原因と予想されます。またお話を伺うとラバーダムも行われなかったようで①の原因もあることがわかりました。

治らない原因が見つかれば治療によって改善できる可能性が十分あると考えられます。治療の効果、成功率、治療する場合のリスクと治療しない場合の将来等説明させていただき、治療することを選択してもらいました。

 

 

 

 

 

 

予想通り、途中から2つに分かれていました。根の先端まで器具が到達したことを確認して

 

 

 

 

 

 

もう一度チェックです。今回は2つに分かれていましたが、重なる部分も多く変形の1本、という形になっています。

 

 

 

 

 

 

治療後です。

治療前と治療後です。違いがお分かりでしょうか?

今回は①③④が治らない主な原因と考えれられ、治療によって改善できました。首尾よく治ってくれれば一番ですがそれでも治らないこともあります。そのような場合には外科的な対応で手を尽くします。

院長:高橋