だいぶ更新をサボってしまいましたが、あいかわらず元気に過ごしております。

 最近は人前でお話しさせていただく機会も増え、その資料作りと練習が重なりなかなかブログを更新できずにおりましてすいません。

 さて本題ですが先日、第40回日本歯内療法学会学術大会にて口演発表を行ってまいりました。

 タイトルは「エンド由来の上顎洞炎」エンドってのはEndodontics、歯内療法という意味で平たく言えば「歯内療法領域の原因で起こる蓄のう症」って感じでしょうか、え?なにそれ蓄のう症?歯が関係あるの?と思ってしまうかもしれませんが、実は関係あるんです。2018年4月にはアメリカ歯内療法学会ではポジションステートメントも発表されました。

 「上顎洞炎」とは一般的に「蓄のう症」とも言われ鼻閉,鼻漏,後鼻漏といった鼻症状に加え頭痛,頰部痛,顔面圧迫痛を伴うもので,まれに上顎洞を介して眼窩蜂窩炎、失明、髄膜炎、硬膜下膿瘍、脳膿瘍、等々生命を脅かす患者のQOLに大きくかかわる疾患である、とされています。

 歯科医師としての臨床的な経験ではどちらかというと上顎洞が原因で歯が痛くなることが多く、「上の奥歯が痛いのですが…」「むし歯はなさそうですね、最近風邪ひいたり鼻づまりが酷かったりしました?」などという会話から上顎洞が原因の歯痛が推察され、まずは風邪をしっかり治してからもう一度診察してみましょうか、ということはよくあるものの歯が原因で鼻づまりが起こってしまっているということはあまり経験がありません。そりゃそうなんです。歯医者ですからね、鼻の病気の診断なんてできませんから。

 文献によると今までは上顎洞炎の10~12%が歯が原因であるとされていましたが、最近の文献では慢性上顎洞炎の40%程度、重度上顎洞炎の86%、片側上顎洞炎の72%に歯科的原因がみられるとされ、思っていた以上に歯の病気と上顎洞炎には密接な関係があることが示唆されています。

 また上顎の奥歯に炎症があると最大80%も上顎洞粘膜の肥厚を認めた、という報告もあります。

 歯の症状も典型的な反応を示すことが少なく非定型な反応を示すことが多いようで診断が難しい、とされています。また、耳鼻科と歯科との境界での病気であるため耳鼻科医と歯科医との連携もこの病気の治療には必要となり患者さんの負担もかかることが多いようです。あっちこっち通院しないとなりませんからね。

 今までは原因と考えられた歯の治療の第一選択は「抜歯」という例が多く、今後歯内療法(根の治療)で対応できる可能性が広がれば歯を抜かなくても済むかもしれません。また、耳鼻科に長く通院しているけれども一向に鼻づまりが治らない、などという場合は歯が原因で鼻の病気になっている可能性もあるかもしれません。

 歯内療法専門医院では歯の詳しい診査診断を行っており通常の歯科治療では見逃してしまうような原因を見つけることは少なくありません。もし鼻の症状でお困りの方は歯のより専門的な検査が役にたつかもしれません。(当然のことながら当院で鼻の治療は行っておりません。あくまでも原因と考えられる歯の治療のみ行っております。)

院長:髙橋