前回の「治療ができる・できない、と病気が治る・治らない、は別物です。」の続きです。
根管治療後10ヶ月経過しても違和感がある、とのことで次の手を打つかどうか考えてもらうことになった患者さんのケースです。
その後3ヶ月ほど経って定期クリーニングでいらっしゃった時に「よし、怖いけどやります!決めました!」と治療をする選択をされました。
患者さんが選択された治療は外科的歯内療法。しかしながら第二大臼歯(前から7番めの歯)であることから一般的な根尖切除術ではなく「意図的再植術」が適応となります。この意図的再植術というのは一旦歯を抜歯してお口の外で根尖を切除し、再び抜歯した穴に戻す、というなかなかのアクロバチックな手術となります。
もちろん、治療にはリスクが伴います。
・歯が割れてしまわないかどうか
・歯根膜を傷つけてしまわないかどうか
・歯槽骨骨折を起こさないかどうか
・再植してくれるかどうか
・骨性癒着や吸収がないかどうか
色々考慮するリスクがあるのは事実ですので、これらのリスクを最小限にできるよう、トレーニングを受けた歯科医師に施術してもらうのがオススメです。院長はおかげさまでトレーニングをしっかりと受けております。
グロくならないようモノクロにしたのでわかりづらいかもしれませんが、根の先端が汚染されていることがわかります。この状態ですと中からの治療をいくら繰り返しても治りません。
汚染された部分を含め根尖部を切除します。
切断部を見たところです。未治療の部分が観察できます。え?どこだかわからないですか?
この赤丸で囲ったところが未治療の部分です。これを中から治療するとなると歯を異常なほど削らないと到達できないでしょうし、異常なほど削っても到達できないことも多いです。
未治療部分を含めた逆根管形成終了時。
未治療部分を含めたセメント充填時。
再植直後のレントゲンです。未治療部分が中から到達しにくいことがお分かりになるかと思います。
治療前と比較してみます。
5ヶ月後。
根の先の影がなくなってますね〜。
違和感も全くなくなり、患者さんも非常に喜んでくれています。「抜いて戻すなんて誰も信じてくれないんですよ〜」って、信じてくれない方が普通だと思いますよ。(笑)
とにかく、経過良好でこちらも嬉しい限りです。
ハッピーエンドばかりじゃないし、治る・治らないと歯が長く保つ・保たないはこれもまた別物で、健康な状態が未来永劫続くとは限りませんがきちんと治療してその後きちんと管理すれば保つことが多いのも事実です。
自分自身の利益になる選択、してみてはいかがでしょうか?
院長:高橋